抄 録 : 長寿社会において, 歯の長期の保存のためには歯髄保護が一つの重要な要因である. 歯髄保護は, 学術的にはう蝕学, 保存修復学, 歯内療法学の接点ともいうべきトピックスであり, この3領域からの複合的な視座で, 基礎研究と臨床研究から歯髄保護の可能性を検討すべきであろう. とりわけ, 最新の接着材料やMTAに代表される機能性材料を活用した歯髄保護を重視し, 象牙質・歯髄を守るための正しい知識と確かな手技を身につけることが重要である.
接着歯学分野において, 象牙質接着の性能が著しく向上したことを背景に, 接着界面が歯髄保護の最前線となって, 同時に歯質が強化されることも発見された. 本稿では, 先端的な象牙質接着の進化が歯髄保護法に与えた影響に焦点を当てて, 接着による歯髄保護の理論的背景, 保険収載もされたレジンコーティング法, さらには深在性う蝕の歯髄保護の考え方について考察してみたい.