環境化学
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酵母を用いたエストロゲン・アンタゴニストアッセイ系の開発と有機スズヘの応用
白石 不二雄白石 寛明西川 淳一曽家 義博佐野 友春彼谷 邦光西原 力森田 昌敏
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2001 年 11 巻 1 号 p. 65-73

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抄録

酵母Two-Hybrid Systemによる酵母エストロゲン・アンタゴニスト試験法と酵母毒性試験法を組み合わせたエストロゲン・アンタゴニストアッセイ系を開発した。酵母エストロゲン・アンタゴニスト試験は, 競合反応用リガンドとしての300pMのβ-estradiolを添加した培地で試験化学物質との反応を行い, 試験化学物質のレセプターとの結合による, リガンドのβ-ガラクトシダーゼ発現を抑制する作用を測定する方法である。酵母毒性試験は, レセプター結合に依存しないでβ-ガラクトシダーゼを発現するような遺伝子を導入した酵母を用いて, 試験化学物質による酵母のβ-ガラクトシダーゼの阻害を測定する方法である。エストロゲン・アンタゴニストアッセイ系を用いてtriphenyltin chloride (TPT) 及びtributyltin chloride (TBT) のエストロゲン・アンタゴニスト作用を試験した。TPTは, -S9試験でアンタゴニスト作用の指標としたEC50値が32nMを示し, +S9試験ではEC50値が250nMを示した。一方, TBTは, -S9試験のみでアンタゴニスト作用 (EC50; 560nM) が認められた。TPT及びTBTともアンタゴニスト活性を調べた濃度域では酵母毒性試験による毒性作用は認められず, エストロゲン・アンタゴニスト作用を有することが示された。有機スズ化合物がエストロゲン・アンタゴニスト作用を有することは, 巻き貝のインポセックスの誘導は有機スズ化合物のエストロゲン・アンタゴニスト作用により引き起こされる可能性を示唆するものである。

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