2023 年 15 巻 1 号 p. 3-19
脳卒中による患者群と統制群によって, 手のリハビリテーションのために鍵盤楽器を訓練し, 表面筋電図(sEMG)とMIDI(musical instruments digital interface)ヴェロシティを客観評価として測定した.同時に打鍵の正確さとテンポ調整の訓練効果を音楽療法士が聴いて判定したものを主観評価として解析した. 併せて, 患者の心理的な行動変容についても検証した.客観評価と主観評価のどちらが鍵盤楽器の評価に使用できるか分析した結果, ヴェロシティはsEMG よりも指の動きの変化を捉えやすく,ff(とても強く)とpp(とても弱く)を弾き分ける指示をすることにより訓練効果を観察しやすいことがわかった.打鍵の正確さとテンポ調整の評価からは,既成曲をpp で演奏すると訓練の効果が表れやすいことが示唆された.脳卒中発症後に時間が経過した後も指の動きに改善が見られた.鍵盤楽器による訓練で,患者の手指のリハビリテーションに対する高いモチベーションの維持および向上が期待できる.