日本中央競馬会競走馬保健研究所報告
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馬の水泳運動について
村上 碩今原 照之戊亥 敏彦天田 明男千田 哲生高木 茂美久保 勝義杉本 修渡辺 博正池田 正二亀谷 勉
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1976 年 1976 巻 13 号 p. 27-49

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抄録

 競走馬の基礎体力の向上ならびに四肢疾患馬の機能回復の一助として,swimming poolによる水泳調教を導入するため,水泳運動が馬体におよぼす影響,考案した処方による水泳調教の効果,ならびに長時間水泳の安全性と持久性について検討した。すなわち,実験馬( Thoroughbred )4頭を用い,(1)5分,10分,20分の水泳運動,(2)4週間にわたり5分,10分,15分,20分と1週につき5分ずつ増加させる処方による水泳調教,および(3)60分間にわたる連続水泳運動という3種類の実験を行なった。本実験において,一般所見ならびに生理学的および血液学的所見について観察したところ,次のような成績が得られた。1. 被検馬は水泳馴致により容易に泳法を習得し,20分の水泳運動に耐え,水泳調教後には60分の長時間水泳を完泳した。2. 水泳運動は水泳中の心拍数,水泳終了後のPCVなどの変動から,走運動における速い速歩から遅い駆歩という比較的軽度の運動に相当した。3. 水泳運動は乳酸産生が少なく,むしろ有気的運動とみなされる。しかし血糖値の減少は走運動と比較してかなり大きく,したがって末稍組織における強いエネルギー要求が推測された。これらのことから,水泳運動時のエネルギー代謝は,走運動のそれとはかなり異っていることが示唆された。4. 水泳調教の効果は,心拍数の水泳中の減少および水泳後の回復の促進,馬体の外貌上の変化などから観察された。また血液学的所見からも推察された。5.60分間の長時間水泳を完泳できたことは水泳調教により,持久性が獲得されたものと考えられる。6. 以上の成績から,水泳調教は基礎体力の向上ならびに四肢疾患などの機能回復のための調教として適当なものであると考えられる。

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© 日本中央競馬会 競走馬総合研究所
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