日本中央競馬会競走馬総合研究所報告
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ウマアデノウイルス抗体検索のための4種の血清学的試験の比較
鎌田 正信
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1978 年 1978 巻 15 号 p. 91-96

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抄録

東京競馬場に所属する3歳乃至4歳のサラブレッド300頭から採取した血清について, ウマアデノウイルスの抗体検索を4種類の血清学的試験法によって行なった。その結果, 中和抗体を保有していたものは供試した300例の被検血清のうちの82.7% (248例) で, HI抗体の58.0% (174例), CF抗体の44.3% (137例) および沈降抗体の16.0% (48例) よりも保有率において高く, ウマアデノウイルスの抗体検索法としては中和試, 験が最も優れていた。
今回供試した被検血清の大部分のものに非特異HI活性は認められず, 8単位のHA抗原を用いたHI試験の成績は抗体価において中和試験の成績と密接な相関関係を示した。さらに, HI抗体を保有していた174例のうちの167例が中和試験陽性であった。このことから, 中和試験と同じようにHI試験を野外におけるウマアデノウイルスの抗体検索に応用できることが明らかになった。
一方, CF抗体を保有していた137例の被検血清中52例が中和試験かまたはHI試験のいずれかが少なくとも陰性で, 両方とも陰性のものが8例あった。また, 沈降抗体を保有していた48例はいずれもCF試験の成績も陽性であった。なお, CF試験陽性例のうち16倍以上のCF価のものが35例もあり, 競馬場における頻繁なアデノウイルスの伝搬がうかがわれた。

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