日本中央競馬会競走馬総合研究所報告
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馬におけるゲタウイルス感染症の発生
1978年の美浦トレーニングセンターにおける臨床疫学
福永 昌夫安藤 泰正鎌田 正信今川 浩和田 隆一熊埜御堂 毅秋山 綽渡辺 脩仁和 勝広竹永 士郎柴田 信山本 剛
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1981 年 1981 巻 18 号 p. 94-102

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抄録
1978年に茨城県の美浦トレーニングセンター在厩馬に発生したゲタウイルス感染症の感染率は37.9%であった. 感染率は年齢, 性別で特に有意差は認められなかったが, 僅かに2歳馬に高い値が示された. 病気の伝播は不規則で遅く, ベクターの介在が示唆された. 発症馬722頭の中で590頭が発熱し, うち230頭は発熱のみを呈した. 発熱馬の106頭は発疹, 103頭は肢の浮腫, 151頭は発疹と浮腫をそれぞれ伴って観察された. 一方, 132頭は無熱に経過し, うち78頭は発疹, 20頭は肢の浮腫, そして34頭は発疹と浮腫を併発した. 発熱の期間は3-8日で, 多くは単峰性, そして二峰性の熱型を示す例も僅かに認められた. 発疹は主として頸部, 肩部, 殿部に現われ, 大きさは直径3-15mmであった. 顎凹リンパ節の腫脹は後肢の主として球節の浮腫と同様にしばしば認められ, いずれも非炎症性であった. 96%の発症馬は1週間以内に回復したが, 発疹と浮腫を伴った発熱馬は14日を要した. 発症中に軽度な貧血が認められたが, 急性期には中等度のリンパ球減少症が観察された.
発症馬の唾液から分離された6株を除き, 鼻腔スワブから分離された4株, 脊髄液から分離された1株のウイルスは血漿から分離された62株のウイルスと同様, ゲタウイルスと同定された. ゲタウイルスは発熱時に採取された血漿の50%から分離されたが, 発熱後4日目までは僅かの例から分離された.
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