抄録
1990年代の九州7県442市町村を対象に,森林の他用途転用を取り上げ,市町村ごとの用途別転用率の回帰分析によって転用が起こる経済的メカニズムを分析した。付け値地代理論によれば,森林の他用途転用は,転用用途において期待される収益が森林を林業経営に供した場合の期待収益を上回らなければ,生じない。そこで,その地域の森林を林業経営に供した場合の収益性に正に作用すると考えられる3つの変数,人工林率,在村者保有面積比率,林業就業者密度が転用率に抑制的に働くかどうかを確かめた。回帰分析の結果,農業用の転用に対しては明確な影響が認められなかったものの,レジャー用,産業用,住宅用の転用に対しては,3変数がおおむね抑制的に働くとの結果を得た。この結果は,林業経営を有利に行いうることが森林転用の歯止めとなる可能性を示唆するものである。