林業経済研究
Online ISSN : 2424-2454
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予算編成過程における林野庁技術官僚の行動分析 : 水源税構想を事例として
竹本 豊
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2010 年 56 巻 2 号 p. 1-12

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抄録

1985年,林野庁は公共事業予算への厳しいマイナスシーリングに対し,自由裁量の効く自主財源を確保するため,水源税の創設を目指した。結果的には廃案となったが,その決定過程で,林野庁技術官僚は関係団体や族議員を積極的に活用し,水源税創設に向けて自律的に活動した。水源税構想廃案の決定過程からは,林野庁技術官僚のプロフェショナル・ネットワークと鉄の三角同盟の一端が解明できた。プロフェショナル・ネットワークは天下りによる強い人的ネットワークをその資源とし,林野庁技術官僚と日本林業協会を中心とした関係団体で構成され,その外延部は各団体の地方組織にまで及んでいた。利権をめぐる政官業の共生関係を示す鉄の三角同盟は,林野庁技術官僚と自民党林政調査会を中心とした農林3部会,日本林業協会を中心とした関係団体で構成され,プロフェショナル・ネットワークがその一辺に組み込まれていた。予算編成過程における林野庁技術官僚は単なる専門領域のスペシャリストではなく,プロフェショナル・ネットワークと鉄の三角同盟を動員して政策実現を目指す,政治的資質を備えた官僚といえる。

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© 2010 林業経済学会
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