本稿では,公共投資が縮小した2000年代に着眼し,都道府県造林費の支出動向を確認するとともに,重回帰分析および回帰木分析により,各都道府県(43団体)の造林費変化と森林資源,所有,財政に関する因子との関係性を明らかにした。その結果,(1)造林費の支出は,2001〜2006年度にかけて減少したが,2007年度から気候変動対策としての財政措置等により若干増加した。(2)両回帰分析の結果,2000年代の都道府県造林費の増減は,資源に関する因子(民有人工林8齢級以上割合)に最も強く規定された。回帰木分析の結果,都道府県造林費は,都市部の強い財政基盤を持つ団体または森林蓄積に対する木材利用の大きな団体で増加した一方,造林費に占める単独事業割合が伸び悩んだ団体で減少した。今後,都道府県が森林資源や所有,財政条件の差異を補完するために単独事業予算を確保し,森林管理水準をいかに維持してゆくかが課題である。