林業経済研究
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泥炭湿地における初期段階のアブラヤシ農園開発が地域住民の生計戦略および土地保有への意識に与えた影響 : インドネシア・中央カリマンタン州カプアス県の事例
岩永 青史穴倉 菜津子御田 成顕天野 正博
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2015 年 61 巻 1 号 p. 75-85

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抄録

アブラヤシ農園は,食用作物栽培に不適である泥炭湿地において,地球温暖化抑制という観点からも否定的に捉えられている。本稿では,地域住民の収入源および経済状況の変化と伝統的に利用されてきた慣習地におけるアブラヤシ農園開発に対する地域住民の意識の2点について,初期段階の農園開発および農園労働が地域社会に対してどのような影響を及ぼしたのかを明らかにし,その結果をもとに住民の生計戦略における課題を検討した。泥炭湿地が広く存在する中央カリマンタン州の村における調査からは,世帯主の年齢が若い世帯では農園労働が,年齢が高い世帯では小規模のゴム園経営がそれぞれ主収入源であることが明らかになった。一方で,農園労働に強く依存している世帯にもゴム園保有の意思があり,アブラヤシ農園開発によって慣習地が失われることに危機感を持っていた。地域住民の経済的安定性を考慮する場合,一時的に農園労働に強く依存し,他の生計手段の選択肢に乏しい立場の世帯のために,リスク分散の可能性を残すことが必要であり,慣習地の保持は1つの重要な条件になると考えられた。

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© 2015 林業経済学会
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