2019 年 16 巻 1 号 p. 9-14
背景・目的 高齢化が進む本邦では各診療分野において高齢者に対する治療成績の報告が相次いでいる。加齢がリスク因子の一つである骨盤臓器脱においても高齢者に対する治療に関して検討が必要と考える。そこで、関西医科大学におけるTension-free vaginal mesh (TVM)手術の治療成績を解析し、80 歳以上の高齢者に対する有効性と安全性について検討した。
方法 2014 年7 月から2018 年2 月までに関西医科大学において骨盤臓器脱患者に対して施行したTVM122 例について、80 歳以上の群14 例(年齢中央値81 歳)と80 歳未満の群108 例(年齢中央値72.5 歳)の2 群に分けて後向きに解析した。安全性と有効性について両群間の周術期成績の比較と、術前後のIPSS ・OABSS ・ICIQ-SF の変化量を比較し、合併症発生と術後再発に関連する因子をロジスティック回帰分析にて検討した。
結果 治療成績について80 歳以上の群と80 歳未満の群を比較すると、手術時間83.5 分(中央値、以下同様)vs 73.5 :p=0.87、出血量27.5ml vs 57.5ml :p=0.04、術後入院日数4.5 日vs 5 日:p=0.68、術後合併症1 例vs 5 例:p=0.55 (膀胱損傷2 例、輸血1 例、尿管ステントもしくは腎瘻を必要とした水腎症3 例)、術後再発1 例(7.1%)vs 8 例(7.4%):p=0.95 であった。排尿状態については術前及び術前後の変化量ともに 2 群間に有意差は無かった。合併症発生に関しては、BMI18.5 未満が(p=0.038、OR=17.1 [95%CI: 1.12– 250.49])有意な因子であり、術後再発に関しては、術前Stage4 (p=0.09、OR=8.2 [95%CI: 7.96–22.18])並びに子宮摘除の既往(p=0.09、OR=13.73 [95% CI:6.23–302.46]) が独立した因子である傾向が見られた。今回の検討では年齢は独立した因子には該当しなかった。結論腟閉鎖などのNative Tissue Repair も考慮する必要があるが、高齢の骨盤臓器脱患者に対するTVM 手術は安全で有効な手術であると考える。