2022 年 18 巻 1 号 p. 58-62
目的:尿失禁を有する女性は多くみられるが、下部尿路症状の受診率は9%と低く、生活の質を損ねる大きな問題である。侵襲医療も存在するが合併症は皆無ではなく、より安全で有効な低侵襲医療が望まれる。今回、高齢者を含めた尿失禁症例に対して経腟高密度焦点式超音波療法high-intensity focused ultrasound(HIFU) を用いてその効果について検討した。
対象と方法:2021 年1 月までの3 年間で経腟HIFU を施行した46 例(62.5 ± 13.9 歳)を対象とした。効果判定にはInternational Consultation on Incontinence Questionnaire-Short Form(ICIQ-SF) を用いた。 結果:HIFU施行後比較的早期に尿失禁の改善を自覚する例が多く、ICIQ-SFは施行前に比較して施行後2 年経過しても有意に低値を示した。施行後、外肛門括約筋の筋力を示す最大随意収縮圧maximum squeeze pressure(MSP) は有意に上昇した。便失禁の併存例では全例で便失禁が改善し、便失禁スコアWexner score は有意に低値を示した。
結論:長期観察の結果から経腟HIFU は高齢者への低侵襲尿失禁治療法としても有用な治療法となり得る事が示唆された。女性の左右の球海綿体筋は外肛門括約筋の前側方に合流しており、腟壁背側は外肛門括約筋であることが最近報告された。これに従えば経腟HIFU で腟背側の外肛門括約筋を直接照射したことにより外肛門括約筋の収縮力が上昇し、便失禁が改善された可能性が推察された。