抄録
森林の保健休養効果を客観的に検証した事例はまだ少ない。数少ない検証事例で行われているのは森林(主に針葉樹林)と非森林(都市環境)の対比がほとんどである。そこで,本研究では心理指標と客観的な生理指標の2つを用いて非森林と森林環境(広葉樹林内・針葉樹林内)における保健休養効果について検討した。心理指標としてPOMSを用い,生理指標として脳波を用いた。脳波は脳機能研究所が開発した感性スペクトル解析装置(ESA-16)である。また同時に16項目の7段階 SD法による官能評価も行った。官能評価の結果によると室内と森林内(広葉樹林・針葉樹林)での評価は大きく異なり,広葉樹林内と針葉樹林内での評価は似通っていた。評価尺度「快適な-不快な」では,森林内では快適であり,室内では不快な評価であった。POMSの結果から広葉樹林と針葉樹林が気分に与える影響は異なっていることが予想された。気分尺度「緊張・不安」,「抑うつ・落込み」は広葉樹林で有意に低く,「活力」は針葉樹林で有意に高かった。脳波を感性スペクトル分析したところ広葉樹林内を散策することで,Relax成分が大きくなる傾向がみられた。