抄録
スギカミキリは、スギおよびヒノキの害虫として知られているが、幼虫がない樹皮に進行する段階でその多くは死亡することが知られている。この原因としてスギが抵抗するために形成する傷害樹脂道が考えられているが、世の形成能力はスギの個体間で大きく異なる。林木育種センターでは、多くのスギ個体についてスギカミキリに対する抵抗性を明らかにしているため、樹幹に刺針処理を行うことによってそれらの傷害樹脂道形成能力を検証してみた。その結果、スギカミキリが産卵し孵化した幼虫が樹皮内に穿孔開始した時期にあたる4月から5月にかけてでは、刺針処理から10日後では新しい傷害樹脂道は形成されなかった。一方、刺針処理から15日後では新しい傷害樹脂道が形成されたが、形成された場所は樹皮年輪内の2年生部分に限られた。スギカミキリの抵抗性と傷害樹脂道の出現率との相関を取ったところ、刺針を比較的早く行った場合には抵抗性との相関がみられた。