抄録
カラマツ精英樹自然交配家系の樹高,胸高直径について,遺伝率の推移等を検討した。調査対象とした次代検定林は,関東林木育種場長野支場構内のカラマツ採種園産種子を用いて苗木を養成し,1973年から1976年までに造成された24箇所である。解析には,5,10,15,20年次における樹高,胸高直径のプロット平均値を用いた。 各形質のプロット平均値に基づき,検定林ごと,および全検定林を対象にした分散分析を行い,推定された分散成分から,家系平均値の反復率,遺伝率を計算した。反復率の平均値は,樹高,胸高直径ともに 0.2__から__0.4の間を推移した。遺伝率は,樹高,胸高直径ともに,0.6__から__0.8の間を推移し,樹高は,ほぼ横ばいで年次変動は見られず,胸高直径は,15年次で最も高くなり,20年次で低下する傾向を示した。形質ごと,家系ごとに求めた最小二乗推定値の年次間の相関係数は,0.59__から__0.90と,どの年次間においても正の相関関係が認められた。 カラマツでは,家系平均値の反復率及び遺伝率は年次による変動は小さく,また,家系の最小二乗推定値も年次間に正の相関が見られたことから,早期に家系の評価を行い優良な家系を選抜できる可能性が示唆された。