抄録
近年スイングヤーダの導入台数が急激に伸びている。スイングヤーダは最大スパンが短く架線の張り上げ高も低いため、これらの機械を存分に使うためには路網の充実が不可欠であり、あわせて路網配置の理論についてもその特性に合わせたものを検討する必要がある。 本研究で提案する手法では、対象林分内すべての地点へ一定の距離以内で架線を到達させることを第一義する。到達性を保証するために、林道網が通過すべき点を予め複数決定し、これらの点を開設延長が最短となるようにグラフ理論の手法を用いて結ぶことで、路網配置計画を決定する。本手法においては林道網が通過すべき点の抽出を自動化した点が特色である。 既存の路網から遠い区域から順々に計画路線を求めていくことで、到達性の保証を確実に行うことができる。すなわち、はじめに既存の林道網から距離と地形を用いて、予め設定した最大到達距離以内で架線を到達させることができる範囲を求める。このとき、架線を地形に邪魔されず架設できるか否かをあわせて判断する。つづいて既存の道路から最も遠い点を求め(以下、最遠点と称する)、最遠点に架線を到達させることができる範囲を求める。その範囲内に林道網が通過すべき点(以下、通過必須点と称す)を一点定める。 定まった通過必須点には林道網が至ることが保証されているので、これ以降は通過必須点を既存道と見なし、再び最遠点を求める過程へと戻る。対象林分すべての区域が、通過必須点を含む既存道からの到達範囲内に収まるまでこの手続きを繰り返す。これにより、既存道と通過必須点のみで林内全域へ架線の到達性を保証した成果を得ることができる。 通過必須点を求めたら、これらの点を最小の開設延長で結ぶことができる路網配置を求める。この問題はグラフ理論の最小全域木問題にそのまま帰着できる。しかし、山間部が対象であるため、対象域内には道路が開設できないような急傾斜の地域・方向が数多く存在する。したがって、通過必須点間相互および各通過必須点と既存路網との距離を求めるときにはDijkstra法を使用し、許容範囲を超える急傾斜のある区間については距離無限大のペナルティを科す。これにより、二点間の開設延長をより現実的な値として得ることができる。 つづいて構築した林道網配置システムを用い、実地における林道配置計画を行った。対象としたのは大分県玖珠郡九重町の民有林で、面積は28.6ha,付近の既存道路は2088mであり、林道密度は73.02m/haとなる。 道路からの最大到達距離を150mとして計算を行ったところ、道路開設延長は2137m,平均集材距離は32.7mとなった。また最大到達距離を50mから250mまで変化させて計算を行ったところ、最大到達距離225mまでは最大到達距離が伸びるにつれて平均集材距離が短くなり開設延長が伸びたが、最大到達距離250mになると平均集材距離は逆に長くなり、開設延長は減少に転じた。また最大到達距離が100mを下回ると急激に効率が悪くなることがわかった。 本研究では到達性を最優先した路網配置プログラムを提示した。計算に時間の掛かるのが難点であるが、本手法により到達性について保証された林道網配置計画をパーソナルコンピュータレベルで計算することが可能となった。また計算結果より林道密度が十分なレベルであっても地形次第で路網の開設が必要なことが明らかとなった。