今日、二酸化炭素の吸収源としての森林への期待が高まっている。また、将来の木質資源確保への対応から森林資源の増大の必要性が叫ばれている。この両者を達成するために海外植林が盛んに行われている。海外植林では、ユーカリ類(Eucalyptus spp.)が主流となっている。オーストラリアの温帯地域等では、パルプ特性が極めて優れているE. globulus(タスマニアブルーガム)が広く植林されており、クローン林業が指向されている。本研究では、ブルーガムにおいて、DNAによるクローン管理技術を組込んだ新育種システムを実行する上での基盤となるMuPS(multiplex PCR of SCAR markers)分析系を開発した。その結果、多型を示す***個のSCARマーカーが開発された。この中から18個のマーカーを選び、6個のSCARマーカーを1回のPCRで増幅できるMuPS分析系を確立した。このユーカリMuPSを利用することにより、(1)採穂園において、MuPS型でクローン鑑定を行うことで、高い信頼性をもつクローン管理が可能となった。また、(2)白石は、DNA分子マーカーによる家系/クローン管理技術を組込んだ新育種システムを提唱し、これにより一般植林地での次代検定が可能となることを報告している。今回開発したMuPSを実際のユーカリの育種に導入することにより、一般植林地での次代検定が可能となり、きめ細かい、高いレベルで育種されたクローン林業への展開が可能となる。