日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: A45
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T1 樹木の環境適応とストレスフィジオロジー
開放系大気CO2増加実験(FACE)による落葉樹数種の成長と生理応答
*江口 則和上田 龍四郎船田 良高木 健太郎日浦 勉笹 賀一郎小池 孝良
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抄録

将来高CO2環境となったときの森林環境予測ため、自然に近い状態でCO2を付加することのできる「開放系大気CO2増加(Free Air CO2 Enrichment; FACE)」を用いて冷温帯林構成樹木の成長と水分生理応答を調べた。FACE内のCO2濃度は、2040年ごろを想定して500ppmとした。一方、対象区は現状の約370ppmであった。また、FACE内の地面を半分に区切り、半分が褐色森林土(褐色土)、残りが北海道の土壌の特徴である貧栄養の(未成熟)火山灰土壌とした。実験材料は2年生の冷温帯林構成樹木11種とした。高CO2環境下での成長応答を調べるために、葉面積指数(LAI)、(地際樹幹直径) 2×(樹高)(=D2H)を測定した。また、高CO2環境下での水分生理応答を調べるために、気孔コンダクタンス、蒸散速度、葉温、土壌水分率を測定した。まず成長量では、D2Hに関して、褐色土で高CO2処理の方が高くなった。火山灰土壌では褐色土よりも高CO2処理の影響は少なかった。しかしながら、窒素固定菌を有するケヤマハンノキは、火山灰土壌でも高CO2処理で著しく高い成長を示した。次に水分生理では、高CO2環境下で気孔コンダクタンス、蒸散速度が低下した。また、葉温、土壌水分率は高CO2処理で高い値をとった。これらの結果から、まず成長量に関しては、将来大気中CO2濃度が高くなったとすると、樹木の成長は増加するが、土壌栄養条件に大きく影響を受ける、また、貧栄養地帯では共生菌を持つ種の成長が著しく高くなる、ということが予測される。次に水分生理に関しては、葉温、土壌水分ともに高CO2環境下で高い値を示したのは、気孔が閉じ気味になったことによる影響だと考えられる。また、このことから、将来大気中CO2濃度が高くなったとすると、葉温変化に伴う葉での酵素活性の変化や、土壌水分率の変化に伴う森林生態系への影響が示唆される。

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© 2004 日本林学会
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