抄録
森林を取り巻く環境が大きく変化する中で、現在森林がどのような状態にあって、今後どのように応答、変化していくのか、その解明は森林研究の大きな課題である。森林の現状を認識し、将来を予測するためには、長期的な調査を継続し、デ-タを蓄積することが不可欠である。それも、将来どのような環境変化が問題になるか、長期的な戦略を持って観測を継続する必要がある。このような長期的で戦略的、また相互比較が可能な統一的観測は日本で行われておらず、JaLTERが果たす役割は大きいものと考えられる。一方、長期的に詳細なメカニズムを追跡する研究は、その労力やコストが大きいため、多くのサイトを設定することは不可能である。各サイトで得られた知見がどの程度一般的なのか、評価することが課題となる。 JaLTERが、ある場所での時間的な変動を詳細に追跡する時間方向に密な観測を目指すのに対し、ある時間における場所による変動を抽出することを目的に、なるべく多くの地点で観測を行うこともある。この観測は、JaLTERと視点や目的が正反対であり、それゆえJaLTERと相互補完的に研究を進めることができるものと考えている。短期集中、多地点観測の例として、全国渓流調査の事例を紹介し、JaLTERと相互補完的に研究を進める契機としたい。