日本森林学会大会発表データベース
第125回日本森林学会大会
セッションID: E02
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遺伝・育種
森林の分断化が冷温帯主要樹種イタヤカエデの交配様式に及ぼす影響
*菊地 賢柴田 銃江田中 浩永光 輝義
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抄録

森林の分断化が森林樹木の交配様式におよぼす影響を検証するため、日本の冷温帯林の主要構成樹種のひとつであるイタヤカエデを材料に、小川学術参考林と隣接する保残帯において成木と種子のSSR解析をおこなった。保残帯では繁殖個体の孤立化と局在化とともにがみられ、それによって結果は異なる傾向をしめした。孤立化した母樹では、近隣からの有効な送粉の不足による自殖率の増加が見られたが、広範な送粉も促進され、花粉プールの遺伝的多様性は保護林と同等であった。いっぽう個体の集中分布は、近隣個体間の送粉を卓越させ、二親性近親交配の増加や花粉プールの減少をもたらしていた。こうした繁殖様式の変化には、据厚分布の花粉散布曲線を示す送粉様式や、成木の遺伝構造、雌雄異熟による自殖機会の制限などが寄与していることが示唆された。森林の分断化は自殖や二親性近親交配の増加による近交弱勢を通じてイタヤカエデの更新に負の影響をあたえる可能性がある。しかしある程度の規模までならば、広範な送粉による遺伝的救援効果によって負の影響は緩和されるものと考えられる。

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© 2014 日本森林学会
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