日本森林学会大会発表データベース
第125回日本森林学会大会
セッションID: K14
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動物
寒冷地で丸太飼育したスギカミキリの越冬態
*北島 博
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抄録

スギカミキリは、通常1年1世代だが2年1世代の個体もいる。しかし、2年1世代の生活史の未解明である。幼虫は、低温恒温条件下では蛹室を形成しても蛹化しない。このことは、低温が蛹化を抑制する可能性を示す。そこで、寒冷地での発育を解明するため、幼虫を接種したスギ丸太を、5月下旬~6月上旬に札幌市、盛岡市、奥日光、および茨城県かすみがうら市に静置した後、12月上旬に回収・割材して発育状態を調べた。その結果、札幌市、盛岡市では樹皮下死亡幼虫以外は全て蛹室を形成し羽化していた。かすみがうら市でも、樹皮下死亡幼虫以外は全て蛹室を形成し、そのうちの89%は羽化、11%は幼虫で死亡していた。これらに対し、寒冷な奥日光では供試数の7%が樹皮下幼虫で生存、43%が蛹室を形成していた。蛹室内での羽化個体はなく、85%が幼虫で生存していた。奥日光の生存幼虫を25℃で加温したところ、摂食せずに62%が蛹化、羽化した。これらのことから、スギカミキリは寒冷地では蛹室形成後幼虫で越冬し、翌年蛹化・羽化することが示唆された。本研究は、農林水産技術会議委託「気候変動に対応した循環型食料生産等の確立のためのプロジェクト」により実施された。

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