南九州における素材流通はこれまで市売が主流であったが、近年直送を初めとする多様な流通経路が生まれている。本研究では、その中で、流通業者が素材生産事業体から素材を買い取り、製材工場へ協定取引によって販売するようになった事例を取り上げ、その実態と意義を明らかにした。調査は、そのような方式を導入した流通業者2社とそこへ素材を販売する素材生産事業体3社に対して行った。
調査の結果、以下の三点が得られた。(1)流通業者は安定供給を求める製材工場に協定取引で素材を販売するとともに、販売価格に基づいて素材の買取単価を決め、定額買取を行うようになっていた。(2)素材生産事業体は、この方式では価格が安定する点と流通業者の販売機能を利用できる点を評価しており、特に、材価が安定した結果、立木購入のリスクが小さくなることをメリットとして挙げた。(3)素材生産事業体から流通業者への販売量には事前の契約はなく、安定しないが、流通業者は自らの立木購入等で調整を行うことで製材工場への安定供給を実現していた。