スギの長期的な成長傾向は地域間で異なることが知られている。また,一般に,温帯の樹木では,春から夏にかけて成長は活発であり,秋から冬にかけて成長は低下・停止する。つまり,成長は季節に対応して周期的に変化する(以下,この季節変化を「成長フェノロジー」と記す)。単年の成長の積み重ねが,長期的な成長を形成しているはずだから,成長フェノロジーの地域差が長期的な成長傾向の地域差に大きく影響していると考えられる。この予想を確かめ,両者がどのように結びついているかを理解するには,成長フェノロジーの地域差を把握する必要がある。そのための基礎資料を得るために,本研究では,茨城県と富山県のスギについて,樹幹の肥大成長フェノロジーを調べた。茨城県と富山県内に生育するスギ個体の胸高位置にデンドロメータを装着し,目視計測によって成長フェノロジーデータを得た。各個体について,成長期間の長さ等を算出し,得られた値を地域間で比較した。なお,過去に岩手県と山形県で収集したデータも比較に用いた。本研究の一部ではJSPS科研費90353797の助成を受けた。