バイオマスの熱利用は、公的な温泉施設などで導入が進められているが、導入後の実績をみると思ったほどの成果をあげていない。その理由として2点について指摘する。
ひとつは熱利用システムの不備、とりわけ蓄熱槽の欠如である。熱供給機器をシステムとして考えると、制御の中心に位置するのは蓄熱槽である。制御システムは需要側にたいして熱を供給するとともに、水温が低下すればボイラーに運転を要求するように設定されている。蓄熱槽を欠いた熱供給システムはチップボイラー製造業者にとっても想定外である。この帰結は、過大つまりより高額な初期費用をもたらす。また、ピーク需要用の補助ボイラーによる重油消費が総供給熱量の30%程度残存し、導入効果を減殺することともなっている。
もうひとつは燃料の質についての無関心であり、製紙用よりもさらに重要なはずの含水率のチェックが供給側、需要側双方で正しく行われておらず、機器トラブルや出力不足を招いていることである。
これらの背景には、国等の熱利用に関する基礎情報の提供と、自治体等の導入時の調査活動が、ともに極めて不十分なことが指摘できよう。