竹林の拡大が渓流生態系に与える影響を明らかにするため,石川県金沢市の山間部を流れる竹林渓流と落葉広葉樹林渓流においてリターバッグによる分解実験,渓流における底生動物のサンプリングおよび竹葉を餌とした淡水生ヨコエビ類(Jesogammarus sp.渓流の優占種)の室内飼育実験を行った。分解実験は,水生動物の侵入が可能な粗メッシュとその侵入を制限した細メッシュの2種類のリターバッグに葉を封入し,夏季に渓流中に設置後,2週間前後の間隔で回収してその重量残存率を比較した。底生動物のサンプリングは30×30㎝の方形区を設定し、そこに生息する動物類をすべてサンプリングし、室内において種の同定と個体数の計測を行った。リターバッグによる分解実験の結果,樹種間で分解速度に大きな違いが見られ,この分解過程を指数関数モデルに当てはめ分解速度を求めると,モウソウチク葉が優占広葉樹葉(コナラ)よりも著しく遅いことがわかった。底生動物サンプリングの結果,竹林渓流と広葉樹林渓流においてヨコエビ類が優占しており,竹林渓流の個体数は広葉樹林渓流の約1/7であった。また飼育実験では,ヨコエビ類は竹葉を忌避する傾向が見られた。