樹洞は森林生態系の生物多様性に影響を与える重要な構造的特徴の1つである。そのため,樹洞の分布や形態が野生動物に及ぼす影響を解明することは重要である。しかし,多雪地冷温帯林において,樹洞に関する研究は少ない。そこで,本研究では代表的な多雪地冷温帯林であるブナ二次林を対象に,樹洞の分布・形質の特徴を単木スケール,林分スケール,および地域スケールで検討した。 調査地は新潟県十日町市,新潟県魚沼市で,13林分にそれぞれ20m×40mの調査プロットを設け,毎木調査を行った。樹洞に関しては,入口径,高さ,向き,形成要因,動物による利用の有無を記録した。解析結果から,単木スケールでは自然樹洞の有無に相関がある変数としてDBHとカミキリ被害が選択された。林分スケールでは,自然樹洞の個数に対しては標高が強い負の相関を持ち,キツツキ樹洞には樹木の生死が選択され,生立木より枯死木でキツツキ樹洞の個数が多いという結果がとなった。地域スケールでは自然樹洞,キツツキ樹洞共にその形質に有意差は認められなかった。