福島第一原子力発電所事故による森林の放射性セシウム汚染は、未だに重要な問題である。IAEAおよび国の方針として、森林の除染対象は、基本的に住居・農地等に隣接する20 mに限定されているため、半減期が約30年と比較的長いセシウム137(137Cs)は、今後も長期にわたって森林内に留まり続けることが予想される。そのため、137Csが森林生態系のどの構成要素に移動・蓄積するか、長期的な動態の予測をすることは、森林の放射性セシウムの適切な管理に必要であり、また、森林内の除染が行われることになれば、効果的な除染を行うために必要であると考える。そこで、森林における、主に樹木を中心とした137Cs循環の長期予測モデルを作成した。福島県および栃木県のスギ・アカマツ・コナラ林で採取したリター、土壌、根、幹、枝、葉に含まれる137Csの濃度を測定し、既存の立木のアロメトリー式を適用することにより、事故発生から時間経過に伴う、土壌-立木間を循環する137Csの濃度変化をモデル化した。本モデルでは、長期的には土壌へ137Csが蓄積されることが予測されたが、まだ森林内のセシウム循環には未解明な部分が多く、モデルの改良が必要である。