日本森林学会大会発表データベース
第128回日本森林学会大会
セッションID: L6
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学術講演集原稿
絶滅危惧種トガサワラおよび共生する外生菌根菌トガサワラショウロの集団遺伝構造
*阿部 寛史村田 政穂酒井 敦岩泉 正和奈良 一秀
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抄録

トガサワラ (Pseudotsuga japonica) は絶滅危惧Ⅱ類 (VU) に指定される常緑針葉樹で、紀伊半島と四国東部に隔離分布している。Rhizopogon togasawariana(以下、トガサワラショウロ)はトガサワラにのみ共生する菌根菌で、トガサワラ残存林の埋土胞子相で優占する。本菌は他の菌に比べ成長促進効果が顕著であるため、トガサワラの更新に重要な働きをしていると考えられる。この2種は生息地が分断化されていることから、種内の遺伝的多様性の減少や近親交配による近交弱勢が懸念される。そこで、SSR(Simple sequence repeat)マーカーを用いて、トガサワラとトガサワラショウロ集団遺伝構造を調査した。その結果、トガサワラ集団では弱い遺伝的分化が検出され(G’ST = 0.066)、四国と紀伊半島間の遺伝的分化に加え、紀伊半島内でも遺伝的分化が進行していることが示唆された。一方、トガサワラショウロでは、宿主を大きく上回る遺伝的分化(G’ST=0.352)が検出され、ほとんどの個体は各採取場所に固有の遺伝的組成を示した。また、各集団間の遺伝距離には宿主と菌で弱い相関関係が認められたことから、両者の遺伝的分化は共通の進行過程をたどってきたものと考えられる。

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