主催: 一般社団法人日本森林学会
会議名: 第128回日本森林学会大会
回次: 128
開催地: 鹿児島県鹿児島市(主に鹿児島大学郡元キャンパス)
開催日: 2017/03/26 - 2017/03/29
氷期遺存種であるハイマツ(Pinus pumila)は、中部以北の高山帯に優占する外生菌根樹木である。これら国内の遺存集団は、山地間で長期にわたり隔離分布している。ハイマツを宿主とする共生菌であるハイマツショウロ(Rhizopogon alpinus)は、地中に子実体を形成するため胞子散布を動物に依存していると考えられ、山地間の遺伝子流動は宿主以上に制限されている可能性がある。本研究では、この仮説を検証するため、ハイマツとハイマツショウロの集団遺伝構造を比較した。国内7集団のハイマツ葉およびハイマツショウロの外生菌根をサンプリングし、核マイクロサテライトマーカー(宿主:既存8マーカー、共生菌:新規10マーカー)を用いて集団遺伝構造の解析を行った。その結果、両種とも集団間での遺伝的分化が認められたものの、ハイマツショウロの方が遥かに大きな分化を示した。このことから、ハイマツショウロの遺伝子流動は風媒花のハイマツに比べて強く制限されており、小集団の近交弱性が懸念される。両者は親密な共生関係にあることから、共生菌の近交弱性はハイマツやその生態系にも影響を与える可能性がある。