主催: 一般社団法人日本森林学会
会議名: 第129回日本森林学会大会
回次: 129
開催地: 高知県高知市(主に高知大学朝倉キャンパス; 3/26は高知県立県民文化ホール)
開催日: 2018/03/26 - 2018/03/29
シデコブシとタムシバの交雑帯の動態を予測するために,2種とそれらの雑種間の交雑和合性を,遺伝子散布モデルで定量化した。まず,マイクロサテライトマーカーを用いて交雑帯における成木307個体の系譜クラスを決定した。次に,37母樹から採取した574種子の遺伝子型を決定した。父性解析で決定した424他殖種子のデータを用いて,交雑和合性をパラメータに持つ遺伝子散布モデルを作成し,パラメータをベイズ推定した。シデコブシとタムシバが母樹の場合,種間交雑は有意な交雑不和合性を示した。しかし,F1との戻し交雑の不和合性は有意ではなかった。さらに,F1が母樹の場合,戻し交雑やF1同士の交配の不和合性は有意ではなかった。推定された他殖種子に占めるF1の割合は1.7%と,同交雑帯における成木の割合14.0%に比べ低い値を示した。以上より,種間交雑でF1が生じることは稀であるが,一旦F1が生じるとその交雑不和合性は低いため,以降の雑種形成のハードルが低くなると考えられた。また,成木でF1の割合が高くなる原因には,ヘテロシスや選択圧の低い空きニッチの存在が考えられた。