日本森林学会大会発表データベース
第131回日本森林学会大会
セッションID: A12
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学術講演集原稿
トチノミの利用と資源管理−京都大学芦生研究林と地域住民との協働−
*坂野上 なお石原 正恵德地 直子
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抄録

 京都府南丹市美山町芦生に所在する京都大学芦生研究林は,1921(大正10)年に地元九ヶ村の共有林に地上権を設定することにより発足した。約4,100haの森林のうちおよそ半分は,設定以来人の手が加えられていない天然林である。林内には,渓流沿いにトチノキの群生する通称「トチノキ平」があるほか,源流部に近い原生的な天然林内には多数のトチノキの巨木がみられる。トチノキの実は,数週間にわたるアク抜きのための複数の工程を経て,栃餅などの食用に利用される。地元の芦生集落でも,かつてはトチノミを加工して保存し常食していたものとみられるが,現在トチノミを利用するのは数世帯に限られている。芦生集落におけるトチノミ利用の変遷と衰退の要因,今もなおトチノミ加工を継承している世帯の実態について報告する。またトチノミの供給源として芦生研究林が大きな役割を果たしてきたとみられるが,教育研究のための森林管理と地元住民の伝統的な資源利用とのバランスをとり,さらにはトチノキの将来にわたる保全を目指し,大学と地元住民との協働により,トチノミの採取に関するルール作りのための取り組みを始めたので報告する。

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