主催: 一般社団法人日本森林学会
会議名: 第132回日本森林学会大会
回次: 132
開催地: 東京農工大学によるオンライン開催
開催日: 2021/03/19 - 2021/03/23
山岳地の荒廃した登山道にヤシ繊維製の侵食防止マットを敷設し,土壌と植生の保護と周囲からの種子の供給に期待する施工も行われている。本研究では,大雪山国立公園内の植生タイプや侵食防止マットの施工方法及び利用形態などが異なる裾合平,雲ノ平の登山道脇,南沼野営指定地の踏み分け道脇において植生調査を行い,その効果を検証した。施工箇所のベルト状の調査区に50cm方形枠を設置し,植被率,各植物の被度,出現種数,実生個体の個体数と個体サイズ,傾斜角度を計測した。非施工箇所でも同様の調査を行った。
裾合平と雲ノ平では,マット施工区の植被率が非施工区より有意に高かった。マット施工区における優占種は,裾合平ではチングルマ,雲ノ平はイワブクロ,南沼はガンコウランであった。裾合平において経過年数が長い施工区ほど,チングルマの実生の平均個体サイズは大きかった。裾合平と雲ノ平では,南向きのマット施工区で植被率が低かった。登山道脇における侵食防止マット施工は周囲の植物の侵入を促進し,個体サイズも大きくなっていることがわかった。施工箇所周辺の植生や地形との関係に配慮した施工が求められる。