日本森林学会大会発表データベース
第132回日本森林学会大会
セッションID: B4
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学術講演集原稿
岐阜県大湫町神明神社におけるスギ巨木倒壊の原因と管理の問題点
*黒田 慶子多賀 正明村尾 満宮嶋 英好森 靖雄
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キーワード: 倒木, 腐朽, 根系, 落雷, スギ
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抄録

 2020年7月11日に、ご神木のスギ(樹高40m、胸高直径310 cm)が倒壊した。当初「大雨による自然災害」とされたが、原因究明には調査に基づく科学的判断が必要である。本研究では、樹体と根の目視調査、計測、試料採取を行い、2012年の樹勢回復工事の記録を参照して、倒壊の直接的原因を探索した。倒壊時には支持根が全て破断していた。腐朽の進行によって支持根が少なく、その一部は枯死していた。幹の西側と南側に接する池のために根は滞水状態にあり、その腐朽や腐敗を促進したと考えられる。幹の傾斜によって北西側の根にかかる張力は大きく、100トン以上と推定される幹重量に耐えられず、根が破断して樹体が瞬時に倒壊したと判断した。2012年実施の樹勢回復工事の際には、樹幹の傾斜が判明していたが、倒壊防止策を講じていない。一方、細根の発生促進が行われており、葉量の増加で樹冠重量が増加し、近年の傾斜の増加につながったと推測された。倒壊前には、降雨による葉への水分付着があり、樹冠重量がさらに増加していたと考えられる。樹勢という曖昧な評価基準が誤診の元になっており、巨樹の管理に必要な診断項目について、科学的な検討を急ぐ必要がある。

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