日本森林学会大会発表データベース
第133回日本森林学会大会
セッションID: S2-5
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学術講演集原稿
茨城県北部における森林の表土保持機能の戦後の変遷―拡大造林から成熟へ―
*南光 一樹山田 祐亮山浦 悠一
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キーワード: 土壌侵食, RUSLE, マッピング
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抄録

森林はリターが雨滴衝撃力を緩和し、地表付近の下草や根系が表面流速を減少することで、土壌侵食を抑制し表土保持機能を発揮する。戦後の長期的な森林・林業の変化に伴う表土保持機能の変遷を調べるため、茨城県北部を対象に、1948、1975、2012年の森林状態における年間表土流出量をRUSLE式により推定した。計算は20mグリッドの数値標高モデルを基盤とし、森林状態の違いを被覆係数Cで表現した。Cは、林野庁生物多様性基礎調査のデータを用いて、樹種、樹齢、傾斜から林床被覆率を得る換算表を作成し、林床被覆率から計算した。森林のCは、緩傾斜より急傾斜で、他樹種より樹齢20年以下のヒノキで小さかったが、ほかの土地利用と比べると表土流出抑制効果が大きかった。対象地域は戦後から現在にかけて、施業により森林の状態は変化したものの、森林に覆われ続けていたため、長期的視点では表土流出量はあまり変化しなかった。表土流出量の空間的な分布に対して、Cの違いの影響は小さく、地形由来の侵食されやすさの指標である地形指数LSの違いがよく対応した。長期的には森林以外への土地利用変化で、短期的には皆伐による林床被覆の欠落が表土保持機能の低下を引き起こす。

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