日本森林学会大会発表データベース
第134回日本森林学会大会
セッションID: P-006
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学術講演集原稿
国内木材産業における近年の設備投資動向
*嶋瀬 拓也
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抄録

2021年に発生した木材不足・価格高騰(いわゆるウッドショック)は、建築工事費の上昇を招き、林業・木材業界のみならず、社会全体に大きな影響を及ぼした。木材市場に生じたこの大きな変化に、国内木材産業がどのように対処しているかを明らかにするため、企業の設備投資や製品開発の動向に特に留意しつつ、業界紙記事の内容分析を行った。その結果、ウッドショック下における国内木材産業の市場行動は、それ以前と概ね同じ方向性を保ちつつ、これを加速するような内容となっていた。より具体的には、国産材を利用する林産工場の大型化や能力強化のほか、それに伴って、径の大きな丸太を利用するための設備投資が進んだ。これらの動きはいずれも、2000年代に入り、外材素材価格の上昇のためその調達が難しくなった国内木材産業が、国産材への傾斜を強めていく過程でみられたものである。すなわち、ウッドショックは、国内木材産業の国産材利用体制を一層強化する方向に働いたとみることができる。言い換えれば、ウッドショック下の国内木材産業にみられる動きは、ウッドショックの発生によって新たに生じたものというより、これまでの流れの延長線上にあるものといえる。

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