フードシステム研究
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研究ノート
Impact Evaluation of a School-based Food Education Intervention on Cognitive and Attitudinal Aspects of Children’s Dietary Habits
Haruka UEDA
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2017 年 24 巻 1 号 p. 2-17

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抄録

2005年の食育基本法成立以降、日本は食育を推進してきたが十分な成果を得たとは言い難い。その主な原因の一つとして、エビデンスベースの教育モデルの欠如が指摘される。そのような状況において、味覚教育(sensory education)という児童の感性を目覚めさせフードリテラシーを向上させることを目的としたエビデンスベースの教育モデルが近年日本で注目されている。本研究の目的は、この味覚教育が児童の食行動の認知的及び態度的側面に与える教育効果を評価することである。第一に、日本における味覚教育の実態を解明するため、代表的な味覚教育プログラムである「味覚の授業 Leçon de Goût」の3事例について観察調査を行った。第二に、そのうちの事例の一つ(n=97、10-11歳児)について質問紙調査及び食事記録法を用いて「味覚の授業」の教育効果を同定した。また、味の仕組みに対する知識、食材識別能力、味の表現力、味の嗜好、フードネオフォビア、食への興味の6つの指標について評価体系を開発した。本研究の結果、第一の調査により教育効果の評価を行った本事例が「味覚の授業」カリキュラムの代表性を十分に確保していること、第二の調査により児童の味のメカニズムに対する理解(p < 0.05)と食意識(p < 0.05)のみ向上することが明らかになった。また、味の表現力と味の嗜好についてもいくつかの重要な示唆が得られた。このように、「味覚の授業」は当該プログラムの目的を達成するため潜在的に有効であることが示されたが、発祥国フランスでの類似の研究結果と比較すると効果は限定的であった。今後は、教育効果の評価方法やプログラム内容の再検討、及びこの種のエビデンスベースの教育モデルが持つ社会的価値についての追加調査が求められる。

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© 2017 日本フードシステム学会
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