地学雑誌
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世界露頭百選(No. 1-3)
エジプトのギザ台地におけるピラミッド時代の地形学
河江 肖剰亀井 宏行
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2011 年 120 巻 5 号 p. 864-868

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抄録

 三大ピラミッドが建つギザ台地はおもに新生代始新世時代に遡るモカッタム累層と呼ばれる浅海成石灰岩の岩盤からなっている。古代の巨石建造プロジェクトにおける最優先事項の一つは採石場の選択であるが,この累層の石灰岩は硬い層と柔らかい層の交互層からなるため採石に適していた。古代人は柔らかい層を除去し,硬い層からピラミッドや神殿建設のための巨大な岩塊を採石した。 2,590,000立方メートルの石材からなるクフ王の大ピラミッドの採石場は,南約300メートルに近在しており,そこから約276,000立方メートルの石灰岩が切り出されたと概算されている。第2ピラミッドの造営者カフラー王もギザの地形を考慮しながら自らのピラミッド複合体の建造を推進し,プロジェクト最後にはモカッタム累層の岩盤を生かし,スフィンクスを巨大な彫像としてつくりあげた。王家最後の巨石建造物は,ケントカウエスと呼ばれる女王が建てさせた彼女の2段式の墓で,独特な形をもつ。墓はもともとクフ王の石切場の中央に,おそらく石材量を量るために,残されていた岩塊だった。三大ピラミッド建造後の限られた空間のなか,彼女は使用可能な最後の土地を巧みに利用し自らの墓を建てさせた。これによってギザ台地の巨石建造プロジェクトは終焉を迎えた。

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