地学雑誌
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論説
西南日本,伊勢地域の中央構造線の位置の決定
鈴木 ドロータ高木 秀雄河本 和朗中村 祐治中村 れいら
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2015 年 124 巻 4 号 p. 587-605

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抄録

 本州弧に対する伊豆–ボニン弧への中新世の衝突の影響を受けて,中央構造線の東西走向が,紀伊半島東部伊勢地域で東方に向かって東北東–西南西へと曲がりはじめるものとされている。しかしながら,伊勢地域では第四系堆積物が広く覆っており,都市化も進んでいることから,中央構造線の地表トレースの正確な位置は不明瞭である。中央構造線の位置の正確な把握は,たとえば地盤の違いを反映した地震動予測に資することや,中部日本における中央構造線の折れ曲がりのより正確な説明を与える上でも重要である。本論は伊勢地域(玉城町・伊勢市)に存在する(1)美和ロック玉城工場,(2)伊勢市役所,(3)伊勢観光文化会館のボーリングコアの岩石学的検討を行うとともに,伊勢市内のその他の建設基盤調査資料や,玉城町大池の断層岩類,領家帯に分布すると考えられる宮川沿いの中新統礫岩,伊勢市内に存在する三波川結晶片岩の露頭など,限られた露頭の地質調査結果から,中央構造線の位置をより正確に求めることができた。今回の調査で,三波川変成岩が一部に露出している伊勢神宮外宮に存在する中央構造線が正宮付近に想定され,ジオツーリズムとリンクしたその教育的活用が望まれる。

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