地学雑誌
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阿蘇火山米塚スコリア丘
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2016 年 125 巻 3 号 p. Cover03_01-Cover03_02

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抄録

 阿蘇火山中央火口丘群の北西部に位置する米塚は,約3300年前の噴火で形成されたスコリア丘で,阿蘇ではもっとも新しい火山の一つである.この火砕丘は底面の直径が370~380 m,高さが80 m程度で,山頂部に直径80 m,深さ15 m程度の大きさの火口を有し,お椀を伏せたような形をしている.阿蘇神社の主祭神である健磐龍命(たけいわたつのみこと)がその手で米をすくって貧しい人たちに分け与えたことから,その名がついたとされる.草原に覆われ,均整のとれた美しい山容は阿蘇を代表する風景として知られているが,2016年4月16日未明の熊本地震本震によって山頂の火口縁周辺に多数の亀裂が生じた(地震後写真の矢印).米塚の西方約1.5 kmに位置する蛇ノ尾火山では複数の斜面崩壊が発生した(口絵1-図13)が,米塚においてはスコリア丘を覆う厚さ1 mほどのテフラ層に亀裂が入ったものの,わずかに変位が認められただけで,美しい火砕丘の姿は保存された.米塚の背後には外輪山とよばれる阿蘇カルデラ壁が見える.この北側カルデラ壁の高低差は300~450 m程度で,頂部は阿蘇火砕流によって埋め立てられたために定高性を有している.今回の熊本地震によって,カルデラ壁急斜面でも多数の崩壊が発生した.
(写真・説明:宮縁育夫 2016年5月1日撮影)

© 2016 公益社団法人 東京地学協会
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