地学雑誌
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論説
ヘボンの気象観測記録からみた横浜における1863-1869年の降水量変動
平野 淳平三上 岳彦財城 真寿美仁科 淳司
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2018 年 127 巻 4 号 p. 531-541

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抄録

 本研究では,米国人宣教師ヘボン(J.C. Hepburn)によって1860年代に行われた気象観測資料をもとに,1863-1869年における横浜の降水量変動の特徴を明らかにした。横浜におけるヘボンの気象観測資料には,月最高気温,平均気温,最低気温,月別降水日数,および月別降水量が記録されている。これまで,日本では公式気象観測開始(1870年代)以前の降水量観測記録はほとんど知られていない。今回,新たに発見されたヘボンの降水量観測記録は,1860年代の降水量変動の特徴を解明する上で貴重な資料である。月別および季節別に降水量変動を分析した結果,1868年の夏季(6-8月)は他の年に比べて,著しく多雨であり,また1867年は降水量がきわめて少なく,乾燥傾向の強かったことが明らかとなった。これらの現象の空間特性を検証するために,日本各地に残された古日記天候記録において1867年と1868年の降水出現率を算出し,それらの空間分布との関連を比較した。その結果,1867年の夏季は全国的に降水出現率が少なく,また1868年は全国的に降水出現率が高かったことが明らかになった。さらに,気候災害記録との比較を行った結果,1867年は日本各地で干ばつや少雨が記録されているのに対して,1868年の夏は,各地で大雨や長雨に伴う水害が頻発していたことが明らかになった。これらの結果は,1867年夏の少雨と1868年夏の多雨が広域的な現象であったことを示している。

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