地学雑誌
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油頁岩の成因的考察ならびに物理, 化學的特性
満洲における油頁岩鉱床 第2報
原口 九万
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1954 年 63 巻 4 号 p. 209-216

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抄録

以上満洲における油頁岩鉱床につき論述したるところを, こXに要約すれば次の如し。
1) 満洲の油頁岩鉱床の分布において, 特に顕著な支那方向の湖盆列に配列される特性があり, この湖盆列に一部東西性の要素を含むことを注意した。
2) 満洲油頁岩鉱床を古生物学的ならびに層序的に分類した。
特にLycoptera層準の改変あるいは発見によつて, これを地質時代的に分類した。
3) 満洲油頁岩鉱床の代表的なものについて, その層序を述べた。
特に著者の発見した三姓については, 発見の経過と賦存状態を追加し, 罹子溝については, 自精査に基づく賦存状態を加えた。
4) 薪炭田あるいは薪油頁岩鉱床の発見には, 基盤の地質構造の研究が重要な問題である。三姓鉱床の著者による発見もまた基盤の花崗岩であつた。それ故満洲における中期花崗岩の溢入については, 多くの実例によつてこれを説明した。
5) 陸成油頁岩の物理的ならびに化学特質について, 著者の研究した羅子溝産に重点をおいて述べた。 (イ) 羅子溝油頁岩中に混入する種々の炭化物につき顕微鏡的研究と化学分析によつて, その性状を明らかにし, いずれも「陸植炭」であることを立証した。特に錆色光沢の弱いものは腐泥炭に非ずして, 水中浸漬期間の永かつた石炭であることを明らかにした。 (ロ) 灰分中に石灰分に富むことを指摘し, 羅子溝油頁岩においては, これがため揮発分および灰分と收油量との関係を撫順産の如く適用し難いことを明らかにした。 (ハ) 羅子溝産は窒素量に富む特性を知つた。これは羅子溝産粗油がparathn基とasphalt基との混合基であることによつて説明した。
6) 原質論として, 満洲油頁岩には, 淡水性藻類, あるいは水棲植物根源説をとつた。
機構論として, 油頁岩の堆積条件と油頁岩あるいは石炭を堆積せしめる環境の型式を想定し, 満洲油頁岩鉱床をこの環境の型式に基く分類を試みた。
7) 満洲油頁岩鉱床の企業価値について一言した。
8) 満洲における中生代の地殻運動としての燕山運動・火成活動・褶曲および断層運動につき略説し, 湖盆とその堆積相の特性について言及した。

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