地学雑誌
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房総半島中部, 小櫃川上流猪ノ川流域の第三紀後期清澄層と安野層の層序
前田 四郎渡辺 喜興大塚 澄夫川辺 鉄哉
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1980 年 89 巻 2 号 p. 113-123

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抄録

房総半島中部で東西に広く分布する清澄層及び安野層の堆積学的, 地史学的研究の基礎として猪ノ川流域の両層の層序を詳細に調査し, また清澄層の層序を太平洋岸の鵜原地域の層序と比較検討した。その結果判明した諸事実や若干の考察とを記してまとめとする。
1) 清澄層及び安野層は主として岩相に基づきそれぞれ3区分される。すなわち清澄層は礫岩の存否や堆積サイクルを構成する単層の厚さを基準にして下部礫質砂岩部層・中部砂岩部層・上部砂岩部層に区分される。厚さは下部礫質砂岩部層が約45m, 中部砂岩部層が約140m, 上部砂岩部層が約80mと推定される。
2) 安野層は下位より厚さ95mの下部シルト部層, 厚さ約85mの中部砂岩・シルト岩部層, 厚さ約120mの上部砂岩部層に区分される。猪ノ川流域においては安野層の中部砂岩 ・シルト岩部層中にゴマシオ状凝灰岩を頻繁に挾在し, これに比べ上部砂岩部層中には多くのスコリアを挾むのが特徴である。
3) 従来, 清澄層及び安野層の層厚に関しては清澄層のそれが安野層のそれに比べて一般的には厚いように考えられていたが (沢田: 1939, 他), 当地域では清澄層の層厚が約265m, 安野層のそれが300~320mで, 安野層の層厚が清澄層のそれよりやや厚いといえる。
4) 清澄層の層序を太平洋岸の鵜原地域のそれと比較検討した結果, 層厚に関してKi-1 (≒HKt) の層準から安野層の下限までは, 猪ノ川流域の清澄層と鵜原地域のそれとではほとんど変化が認められなかった。
5) 鵜原地域の清澄層の下部部層には猪ノ川流域の下部礫質砂岩部層に含まれている細礫はほとんどみあたらないので, 岩相に東西で若干の変化がある。
6) 猪ノ川流域の清澄層全般にわたってみられる炭質物の葉理は鵜原地域においてはやや乏しい。
7) 当地域の清澄層と安野層とは共に有孔虫化石や石灰質ナンノプランクトン化石はかなりよく産出するが, しかし軟体動物化石は乏しい。

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