地盤工学ジャーナル
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論文
降雨時のまさ土斜面表層部におけるせん断変形挙動と土壌水分の関係
中井 真司渡邉 聡笹原 克夫岩田 直樹
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2016 年 11 巻 2 号 p. 115-125

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抄録

表層崩壊の発生メカニズム解明を目的として,まさ土斜面で降雨時のせん断変形と土壌水分の変化を観測した結果,表層から1mの領域で降雨浸透に伴い浅層部からせん断変形が始まる傾向が確認された。変形と体積含水率の上昇および土壌水分吸引水頭の低下は同じ深度で発生しており,降雨時に高含水状態になった領域で変形が発生したと考えられる。夏季の降雨では湿潤によりせん断変形が進行し,降雨後の乾燥過程で逆方向にゆっくりと戻る傾向が見られたが,9月後半以降は浅層部では変形が累積する状況が確認された。本研究では,降雨および土中の水分状況とせん断変形に着目して,初期含水状態の違いや降雨強度等の影響とせん断変形の関係について検討した。この結果,初期体積含水率が大きく,かつ体積含水率の上昇速度が大きい条件において,せん断ひずみが増加しやすいことがわかり,先行降雨による影響で斜面が高含水状態の時に降雨強度が大きな雨が降ると,大きなせん断変形が発生しやすい可能性を示した。

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© 2016 公益社団法人 地盤工学会
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