2019 年 14 巻 2 号 p. 149-159
バイオレメディエーションでは,水素徐放剤の投入による浄化促進が可能であるが,難透水層の場合,注入方式では薬液の浸透性,また,攪拌方式では地盤の泥濘化の問題がある。筆者らは,対応策として,難透水層における水素分子の拡散効果に着目し,また理論的基礎検討により明らかになった平面的拡散方式の優位性を活かし,一定の離隔で水素徐放剤をウォータージェットで切削した薄膜状スリットに投入する浄化手法を考案した。薄膜離隔は上下方向で0.3mとして2現場で実証実験を行った。その結果,低濃度汚染サイトでは8.5箇月でほぼ完全に浄化され,高濃度汚染サイトでは最大濃度75mg/Lであったテトラクロロエチレンが2年間でほぼ環境基準値(0.01mg/L)レベルまで分解された。これら現場試験の結果より,ウォータージェットによる浄化促進剤の投入と平面的拡散を併用した技術の有効性が実証された。