2019 年 14 巻 3 号 p. 241-252
近年,気候変動の影響と考えられる降雨に起因する斜面の表層崩壊,および土石流の発生事例が増加しつつある。その危険度評価のため,細粒分の分布特性およびその保水特性を把握することを目的とした比抵抗電気探査の適用事例が増加しつつある。本研究では,熱帯性気候で雨季と乾季の区別が明確であるタイ・チェンマイの風化花崗岩残積土を用いて構築された盛土斜面において実施した比抵抗電気探査で得られた比抵抗分布と,当該斜面で計測した体積含水率変化を比較することで,乾燥状態と湿潤状態での比抵抗の変化,および比抵抗の変化する領域が斜面表層部に現れる特性について明らかにした。さらに,本研究で得られた知見に基づき,当該斜面と異なる地盤条件および気候条件下での,降雨浸透・排水過程を対象とした斜面における比抵抗電気探査の適用性についても考察を加えた。