2019 年 14 巻 3 号 p. 287-294
黄砂とは,乾燥地において強風のため微細な土粒子が舞い上がり,偏西風によって広域に運ばれる現象である。これを予報する数値モデルでは,粒径と臨界摩擦速度の関係が用いられる。地表面に土壌クラストが存在した場合,粒径と臨界摩擦速度の関係が変化することが指摘されており,これが予報精度低下の原因とされている。本研究では,土壌クラストに粒子が衝突するため,粒径と臨界摩擦速度の関係が変化するものと考えた。そこでモンゴルゴビ砂漠北部で採取した土試料を用いて土壌クラストを作成し,入射角度を固定・入射速度を変化させたガラスビーズを無風下で衝突させ,土壌クラストからの土粒子飛散状況を高速度カメラで撮影する実験を計 115 回実施した。その結果,ガラスビーズの入射速度とともに飛散する放出粒子数は増加すること,放出粒子の到達高さは土試料表面から約 20mm 以内であることがわかった。