自然由来のヒ素を含む掘削岩とヒ素の収着能が異なる未汚染土壌を充填,連結した二段階カラム通水試験を行い,掘削岩から溶脱したヒ素の下位土壌への集積形態および化学的環境変動に伴う再放出性を明らかにすることを試みた。土壌のKdによらず掘削岩から溶脱したヒ素の大部分(94%)が下位土壌に流入後,速やかに易溶性ではあるが非水溶性の形態で集積し,下位土壌系外へ土壌環境基準値を上回ってヒ素は流出しなかった。下位土壌のKdによらず,海水と同濃度のNa+侵入,還元環境,pH弱酸性から中性,Caアルカリによるヒ素の再放出性は低く,植物のヒ素吸収濃度は高くならなかった。しかし,土壌のKdが低い場合,下位土壌の流出側にも易溶な形態でヒ素が集積していたため,再利用後の極端なpH 変動によってヒ素が再放出される危険性が示唆された。