本報告では,大阪府堺市の造成地で発生した第四紀大阪層群の地すべりにおいて,一連の現地調査,現場・室内一面せん断試験,珪藻化石分析等を実施し,地質的環境と地すべり発生機構について考察している。地すべりの発生素因である層状破砕帯の分布と形成機構および力学的特性を明らかにする上で,大阪層群における海成粘土と淡水成粘土の物理特性が大きく異なること,淡水成粘土よりも海成粘土の方がせん断強度は小さいこと,海成粘土層において層状破砕帯が形成されやすいこと,層状破砕帯から採取した試料を用いた繰り返し一面せん断強度は現場のすべり面の逆算強度に近いこと,等が確認された。