本論文では,福島県内陸部のうち中通りやいわき地域の造成盛土や自然斜面の崩壊が生じた要因として地震作用,地形・地盤構造,材料特性などについての調査結果を報告する。造成盛土の被災形態は沢埋盛土と水田上の造成盛土の変状に分類でき,盛土材は福島市伏拝の造成地が火山灰質粘性土であるものの,それ以外は細粒分質で非塑性の砂質土であり,東北地方で生じた最近の地震による火山灰質砂質土で構成される盛土の流動的な崩壊の被害とも共通点が見られた。自然・切土斜面の地すべりや崩壊は中通りの南部地域で多く発生している。地すべりは移動体が未固結火山性堆積物で構成され,崩壊はこの地域の基盤をなす火砕流堆積物溶結相露頭斜面で発生している。地すべりは,少なくとも上下に二段のすべり面を持つ複合地すべりである。