本稿は,世界的な高齢化社会を背景に,超高齢者に対する終末期を含む緩和ケアにおける理学療法の理論的・実践的枠組みを提案するものである。超高齢者は,疾病や機能低下が避けられないため,自立支援と並行して緩和ケアが重要となる。しかし,緩和ケアとしての理学療法への理解や教育は十分とは言えない。そこで筆者は,生活の質(QOL)向上を目指し,対象者や家族の「納得」を重視しながら,対象者の身体機能だけでなく,感情や周囲との関係性の再構築にも焦点を当てる緩和ケアとしての理学療法の必要性を訴える。具体的には,ナラティブ(物語り)による受容,6つの視点(身体活動・睡眠・食事・排泄・コミュニケーション・感情表出)に基づく評価,新たな生活スタイルの提案(エネルギー温存療法),人生の振り返り支援,家族・介護者へのケアを柱とする実践的枠組みを提示する。今後の課題は,超高齢者を対象とした緩和ケアとしての理学療法に関するエビデンスの構築と方法論の体系化である。